1 児童発達支援管理責任者の仕事とは
児童発達支援管理責任者の仕事内容は二つのポイントがあります。
1-1 個々のサービス利用者のアセスメントや個別支援計画の作成
個別支援計画のプロセス
個別支援計画の作成時には、児童の特徴や課題を把握し、児童と保護者が必要とするサービスを踏まえ、計画を作成する必要があります。
参照:横浜市健康福祉局障害支援課「個別支援計画を作成するにあたって」
STEP1 アセスメント
Todo
個別支援計画を作る前に、児童発達支援管理責任者が施設を利用予定の児童と保護者と面談をします。児童の初期状態、つまり児童の能力や置かれている環境、日常生活全般の状況、児童と保護者がサービスを受ける目的などを評価し、児童と保護者のニーズや課題などを把握する必要があります。
ここでしっかりとアセスメントがされてなければ、課題も支援目標も曖昧な具体性のないものになり、後々のモニタリングが難しくなってきます。また実施指導などで必要となるため、アセスメント内容などの記録を残しておくことが重要です。
ニーズ把握のヒント
参照:兵庫県健康福祉部障害福祉局 「障害児通所支援における基本姿勢・個別支援計画の作成等」
「本人支援」に即したニーズ把握
子ども本人の発達したいというニーズ
- 生活習慣等の自立に向けた課題把握(できる/できない)
- 運動や言語発達、認知特性の把握(得意/苦手)(強み/弱み)
- 社会性、行動、情緒の発達課題の把握(未学習/誤学習)
- 自分の希望(やりたいこと、好きなこと、将来の夢など)
「家族支援」に即したニーズ把握
家族の希望(どう育ってほしいか)、困りごと、不安など
- 家庭内または外出時に困っていることの把握
- 子どもの特性に応じた家庭環境、子育て力等の把握
「地域支援」に即したニーズ把握
地域生活を送る上での課題、関係機関の困りごとなど
- 園や学校、他施設で困っていること
- 連携や役割分担が必要な機関の把握
STEP2 個別支援計画の原案
Todo
アセスメントで得た児童の情報を元に、児童発達管理責任者が個別支援計画の原案を作ります。
個別支援計画には、足りないスキルをどのように補うか、現在の具体的な課題は何か、さらに児童・保護者の生活に対する意向や総合的な支援の方針、支援の目標と達成時期などを踏まえたうえで、一人ひとりに合わせて計画する必要があります。
短期目標(〜6ヶ月)と長期目標(1年)設定では、高すぎず低すぎず、支援期間と支援内容を考慮した上で到達可能な目標であることが重要です。
課題整理のヒント
参照:兵庫県健康福祉部障害福祉局 「障害児通所支援における基本姿勢・個別支援計画の作成等」
- 集められた初期状態の情報の整理
- 本人支援/家族支援/地域支援毎に整理
- 生物学的/心理的/社会的支援で整理
- 本人や家族等の意向
- 本人/家族/地域の各ニーズと相互関係の整理
- 支援者が気になること(考えること)
- 課題、要因の理解・解釈・仮説としてまとめる
- 支援の課題分析
- 支援が必要な課題(育てたい内容【環境含む】)
- 将来の見通し
- 支援をするによる期待される将来の姿(到達目標)
STEP3 カンファレンス
Todo
前段階で作成した個別支援計画の原案に基づいて、担当者である管理者や児童指導員等で検討会議(カンファレンス)を開催する必要があります。
原案の内容について、原案が児童の課題克服に適しているのか、サービス内容、目標設定などを話し合います。アセスメント同様、カンファレンスの記録も残しておくことが重要です。
STEP4 個別支援計画の作成
Todo
原案とカンファレンスで出た意見を元に、児童発達支援管理責任者が個別支援計画書を作成します。
作成後は、支援の担当者と責任者を決め、内容についてスタッフと共有することが重要です。
STEP5 個別支援計画の交付・実施
Todo
個別支援計画は、児童とその保護者に説明し、同意を得た上で実施しなければなりません。その点を留意し、実施する必要があります。
実施を円滑に効率よく進めるには、支援スタッフがお互いに情報を交換し合い、支援の経過をきちんと保護者に報告することが求められます。
STEP6 モニタリング
Todo
モニタリングとは、個別支援計画の中間評価と修正のことです。個別支援計画を作成してから少なくとも6ヵ月以内に1回以上、モニタリングを行います。
個別支援計画に沿ったサービスが提供されているか、目標が達成できているか、定期的に児童や保護者に面談を行ったりなど支援計画について評価を行います。モニタリングの後は、中間評価を元に修正を行い、児童により適した個別支援計画を作成します。ここでもモニタリングの記録は残しておくことが必要です。
定期的に計画の見直しを行い、必要に応じて個別支援計画を変更することが重要となります。
1-2 他のサービス提供職員に対する指導的役割
管理者として職員に対してサービス提供部門を引っ張る存在として活躍します。
職業倫理や情報管理についても模範的な行動を示す必要があります。
2 児童発達支援管理責任者の就業場所について
障害児通所支援と障害児入所支援は、事業所(1つの事業所番号)ごとに1名以上の児童発達支援管理責任者を常勤・専任で配置することが、事業所指定を受ける必須条件とされています。児童発達支援管理責任者がどのような事業所で働いているか確認してみましょう。
(1) 児童発達支援
児童発達支援とは、障害児通所支援の一つで、小学校就学前の6歳までの障害のある子どもが主に通い、支援を受けるための施設です。日常生活の自立支援や機能訓練を行ったり、保育園や幼稚園のように遊びや学びの場を提供したりといった障害児への支援を目的にしています。
(2)放課後等デイサービス
放課後等デイサービスは、6歳~18歳までの障がいのあるお子さんや発達に特性のあるお子さんが、放課後や夏休みなどの長期休暇に利用できる福祉サービスです。
個別の発達支援や集団活動を通して、家と学校以外の居場所やお友だちをつくることができるので“障がい児の学童”とも表現されます。
(3)訪問型の児童発達支援
居宅訪問型児童発達支援では、重度障害のある子どもの自宅に出向いて支援を行います。また、保育所等訪問支援では、障害のある子どもが集団生活に適応できるよう、本人への支援だけでなく訪問先スタッフへの助言・指導にも取り組んでいます。
(4)障害児入所施設(福祉型・医療型)
障害のある児童が入所し、保護、日常生活の指導および独立自活に必要な知識や技能の付与を受ける施設です。福祉サービスを行う「福祉型」、福祉サービスに併せて治療を行う「医療型」の2つがあります。
なお、障害児が入所する施設は以前、障害種別ごとに分かれていましたが、複数の障害に対応できるよう、2012年度に障害児入所施設に再編されました。もっとも、これまでと同様、障害の特性に応じたサービスの提供も認められています。
参考:児童発達支援ガイドライン|厚生労働省
参考:第7回「障害福祉サービス等報酬改定検討チーム」資料|厚生労働省
参考:医療型児童発達支援|障害福祉情報サービスかながわ
3 児童発達支援管理責任者になるためには
児童発達支援管理責任者になるための実務経験の要件は以下の通りになります。
要件で見るべきポイントは従事してきた「施設」「業務内容(相談/直接支援)」「国家資格の有無」の3つ。
簡単にまとめると、以下のいずれかに該当していることが要件となります。
5年以上の相談支援業務
下記a~fの機関で5年以上、且つ高齢者分野での期間を除いて相談支援業務に従事した期間が3年以上必要です。
a.相談支援事業に従事する者
地域生活支援事業
障害児相談支援事業
身体障害者相談支援事業
知的障害者相談支援事業
b.相談機関等において相談支援業務に従事する者
児童相談所
児童家庭支援センター
身体障害者更生相談所
精神障害者社会復帰施設
知的障害者更生相談所
福祉事務所
発達障害者支援センター
c.施設等において相談支援業務に従事する者
障害児入所施設
乳児院
児童養護施設
児童心理治療施設
児童自立支援施設
障害者支援施設
老人福祉施設
精神保健福祉センター
救護施設
更生施設
介護老人保健施設
介護医療院
地域包括支援センター
d.就労支援に関する相談支援の業務に従事する者
障害者職業センター
障害者就業・生活支援センター
e.学校教育法第1条に規定する学校(大学を除く)において相談支援の業務に従事する者
幼稚園
小学校
中学校
義務教育学校
高等学校
中等教育学校
特別支援学校
高等専門学校
f.医療機関において相談支援業務に従事するもので、次のいずれかに該当する者
病院
診療所
5年(※8年)以上の直接支援業務
下記a~eの機関で5年以上(※社会福祉主事任用資格者等でない場合は8年以上)、且つ高齢者分野での期間を除いて直接支援業務に従事した期間が3年以上必要です。
a.施設等において介護業務に従事する者
障害児入所施設
助産施設
乳児院
母子生活支援施設
保育所
幼保連携型認定こども園
児童厚生施設
児童家庭支援センター
児童養護施設
児童心理治療施設
児童自立支援施設
障害者支援施設
老人福祉施設
介護老人保健施設
介護医療院
病院又は診療所の療養病床関係病室
b.事業所等において介護業務に従事する者
老人居宅介護等事業
障害児通所支援事業
児童自立生活援助事業
放課後児童健全育成事業
子育て短期支援事業
児童養育事業
小規模住居型児童養育事業
家庭的保育事業
小規模保育事業
居宅訪問型保育事業
事業所内保育事業
病児保育
子育て援助活動支援事業
障害福祉サービス事業
老人居宅介護等事業
c.医療機関等において介護業務に従事する者
病院
診療所
薬局
訪問看護事業所
d.障害者雇用事業所において就業支援の業務に従事する者
特例子会社
助成金受給事業所
e.学校教育法第1条に規定する学校(大学を除く)
幼稚園
小学校
中学校
義務教育学校
高等学校
中等教育学校
特別支援学校
高等専門学校
有資格者としてそれに係る実務経験5年以上+3年以上の相談または直接支援業務
下記の資格保有者としてそれに係る実務経験5年以上、且つこれまでに紹介した機関のうち、高齢者分野を除く機関で相談又は支援業務に従事した期間が3年以上必要です。
医師、歯科医師、薬剤師、保健師、助産師、看護師、准看護師、理学療法士、作業療法士、社会福祉士、介護福祉士、視能訓練士、義肢装具士、歯科衛生士、言語聴覚士、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師、管理栄養士、栄養士、精神保健福祉士
ただし、実務経験に含まれる業務の範囲は都道府県により独自の基準が設けられている場合があります。大阪や埼玉では、上記より短い期間でも実務要件を満たすとされているなど、例外もあるため注意が必要です。
最終的には、都道府県のホームページから確認されることをおすすめします。
研修内容について
実務経験の要件を満たす方は、まず児童発達支援管理責任者基礎研修を受講します。基礎研修の受講を終え、相談支援従業者初任者研修(講義部分)を修了している又は平成24年4月1日以前に相談支援の業務に関する研修を修了し、証明書の交付を受けている場合は「基礎研修修了者」となります。
基礎研修修了者が、相談又は直接支援業務2年以上従事した場合、もしくは平成31年3月31日時点で児童発達支援管理責任者研修を修了している場合、児童発達支援管理責任者実践研修を受講することが可能です。
実践研修を修了した後は、5年ごとの児童発達支援管理責任者更新研修も必要です。
※平成31年3月31日時点での児童発達支援管理責任者研修修了者は、平成36年3月31日までは児童発達支援管理責任者としてみなされますが、同日までには児童発達支援管理責任者更新研修修了者になる必要があります。
4 まとめ
平成29年(2017年)障害福祉サービス等経営実態調査結果(厚生労働省)によると、児童発達支援管理責任者の平均年収は、児童発達支援約399万円、放課後デイサービス約330万円です。2019年からは、児童発達支援管理責任者も「福祉・介護職員等特定処遇改善加算」の対象となり、経験や技能によっては年収440万円以上を期待できる環境が整いました。
高い年収を獲得できる環境ですが、責任ある仕事ですので、5年に1度の更新研修があります。障害を抱えている子どものサポートという現代に必要な職業です、是非チャレンジしてみてください。